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映画感想ーいろんな楽しみ方があっていいじゃない

映画感想 In Time(2011)

 

No one… should be immortal if even one person has to die.

人は不死であってはならない、そのために誰か死ぬなら。

 

 

 

「IN TIME」(邦題:タイム/TIME)【2011年公開】

 

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主演ジャスティン・ティンバーレイクアマンダ・サイフリッドキリアン・マーフィ

ジャスティン・ティンバーレイクといえば彼の楽曲Sexy Backをリリース当時死ぬほどラジオで聞いてましたね、懐かしい。

前記事で紹介したドラマ『ホワイトカラー/White Collar』のマット・ボマーも出演しています。

監督と脚本のアンドリュー・ニコルは 『トゥルーマン・ショー/The Truman Show』(1998)の脚本家でもあります。

 

 

◆あらすじ

近未来、遺伝子操作によって人類は肉体的に25歳以上歳を取らなくなります。人口過多を懸念して世界の通貨は全てその人が持つ寿命=時間に置き換わってしまいました。このことから富裕層は膨大な資産で得た長寿を持て余し、一方貧困層はその日1日を生きるのが精一杯の寿命しか労働で稼げず、貧しい人々が人口調整の対象として死んでいく状態にありました。25回目の25歳の誕生日を迎えた母親と主人公のウィルは親子2人で寿命をやりくりし支え合いながらなんとか暮らしていました。ウィルはひょんなきっかけから長すぎる人生に嫌気がさした富豪の男の100年以上ある寿命を譲り受けます。その寿命を母親にも分けようとしますが、人口調整の餌食となった母親が目の前で亡くなってしまいます。家族、友人ともども富裕層に搾取されてきたと感じていた彼は譲られた寿命を使って富裕層にこれまでの代償を払わせてやると誓うのでした。

 

 

テーマ:アンチ銀行家

この映画は銀行家に対するアンチテーゼをテーマにしている作品だと思います。作中の通貨は時間で、タイムゾーンという名の貧富の境界があり、タイムキーパーという時間を管理する組織があります。タイムキーパーは権威者の指示に従いタイムゾーンを超える時間の移動を取り締まっています。現実の私たちの世界で銀行家とは出資や株主になるなどで金融機関に強い影響力を持つ者(財閥など)のことを指し、通貨を扱う銀行家の存在は近世史と切っても切れない関係にあります。とくにアメリカ合衆国では独立戦争以前から銀行家は自らの利益のため、国民(アメリカは当時植民地)が不換紙幣を使うことを妨げたり、南北戦争では国力を2分割し経済力を弱め、アメリカ政府が戦費を賄うために公債を担保に紙幣発行を余儀なくさせたりなど通貨供給を支配してきました。アメリカ合衆国だけでなく世界を巻き込んだ2度の大戦や日本のバブル経済とその崩壊も例外ではなく、引き金となる出来事には銀行家の思惑がその一端を担っていました。

作中でも人口調整のために物価と税金が同時に上がり、それらを支払えない貧しい人は死に追いやられます。そうした世界の仕組みを変えるため、主人公のウィルは金融機関へ強盗に入り、その資本を貧しい人々へバラ撒くことで貧困から解放しようとします。映画の最後に大きな銀行をターゲットにするシーンはまさに直接的なメッセージだと思います。

 

SF設定など釈然としないとこ

私個人としては本作のベースの設定はすごく面白いと思います。寿命が通貨ってなかなかない設定だし、時間の渡し方とか持ち方(まさに腕時計)の設定が面白いなと思います。しかしテーマを明確にするためSF特有の複雑な設定を省いたせいか、時間寿命と車以外のものに近未来が感じられない作品だと思います。またウィルの父親の存在は必要だったのか疑問です。父親に関してどの程度の人物で具体的に何を成した人なのかぼんやりしたまま語られるのでなくてもよかったと思います。映画は尺や編集、諸々の関係もあるし全て描ききれないのは分かりますが、父親の設定を付与するならSF要素の設定を掘り下げて欲しかったとちょっと物足りなく感じました。

前項で主人公は資本を貧しい人へバラ撒いて世界の仕組みを変えようとすると書きましたが、資本を貧しい人々へ分配したとして、それだけでは解決しないさまざまな社会問題があります。作中ではその後の課題について何も触れずに終わってしまいます。問題提起のみで終わらせたかったのかもしれませんが、複雑な問題のわりに投げやりな終わり方に感じてしまいました。

 

余談

本作は過去に見たことがあって、最近見直したいな常々と思っていました。というのも、もし全人類が不死になれるならば過去の凄惨な歴史を繰り返さずに済むかどうか疑問に思っているためです。これまで人類が経験してきた戦争行為はつまるところその時代ごとの権力者の利益のために起こっていて、それらをすべて経験してきた人間ならばその犠牲や凄惨さを知って争いを止めることができるのではないかと思いました。けれど、銀行家の話をしたように、人間は己の利益を追求せずにはいられない本質があるから全人類が不死であっても戦争は繰り返されるのかもしれない…(かといって人類は不戦の歩みを止めるべきではないと思います)

有色人種差別要素はありませんがChildish GambimoのThis is Americaがこの映画のテーマに合ってるなと感じました。勿論この記事も特定の人種に対するヘイト的意味はありません。

寿命が通貨ってそのまんま、稼げなきゃ死ねと言われてるようなものですよね。