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映画感想ーいろんな楽しみ方があっていいじゃない

映画感想 Sucker Punch(2011)

You have all weapons you need. Now fight.
武器はそろってる。さあ戦って。

 

最初のタイトル何にしようかなと思案して
やっぱり1番お気に入りの「Sucker Punch」(邦題:エンジェルウォーズ)

【2011年日本公開】の感想を初投稿にしようと思います。

 

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エミリー・ブラウニング主演、ジョン・ハムカーラ・グギノオスカー・アイザックなど実力派俳優が出演するこの映画、私世代では「ハイスクール ミュージカル」でお馴染みのヴァネッサ・ハジェンズも出演しています。

当時この作品を観ようと思ったきっかけは彼女が出演しているから・・
HSM作品以外の彼女の演技が観てみたくてでした。
(一時期彼女の声にどハマりしてて個人アルバムのCD買いましたWhatever Will Beよく聞いてた記憶)
そうです、私は映画観るきっかけは出演俳優派の人です。(変なおじさん風)

 

私事はさておきザック・スナイダー監督作品ということでこの映画をご覧になった方のほうが多いかもしれません。

ザック・スナイダーといえばコントラストとVFXの達人というのが私のイメージです。
とにかくブラックポイントが濃く彩度低めな作風が多いかなと思います。

Sucker Punchも冒頭から映像的にもストーリー的にも暗い「起」で始まります。だからこそ「結」の明るさが際立つ作品だと思います。

監督本人曰くの「マシンガンを持った『不思議の国のアリス』」がこの作品をよく表現しているように、ファンタジーとリアリティーが入り混じって進行する作品です。

 

 

世界観とテーマ「自己」

義父の策略で精神病院送りにされた主人公と仲間たちがファンタジー世界へ行ってクエストをクリアすると現実世界でも目的のアイテムが手に入る。獲得したアイテムを使って彼女たちが切り開いた道の先には…と言うのが本作の大筋です。

ここで注目したいのが彼女たちがファンタジー世界へ入っていくシーン転換。よく芸能人やアイドルが世間を魅了するという表現がありますが、その「魅了する」を具現化したものがファンタジー世界です。私たち観客は主人公のベイビードールに魅せられてファンタジーの世界へ入っていくのです。なんてったって皆さん別嬪さんですから!
 
今作でのファンタジー要素は人間が実際に直面する苦悩や困難、そしてそれらを乗り越える過程をファンタジー世界で表現することによって、現実で繰り広げられるよりも理解し易くシンプルに、目に面白いようにする表現方法の一つとして捉えてください。(実際現実では物事はそう単純ではないことが常なので)

 

世界観の変化が多くて観づらいと感じる人もいるかもしれませんが、対してテーマは単純です。
冒頭の英文は作中セリフの引用ですが、これが今作のテーマそのものです。
抗おうと困難な状況に身を投じるのも自分、己を縛るのも自由にするのも自分
全て自分が何かを変える力を持っていて、さあ戦えと背中を押してきます。
ただすべてに立ち向かえとは言っていないと思います。主人公のベイビードールは逃げるのが目的、妹と母を失った現実から逃げることが彼女の大目標と言えるからです。

物語終盤ベイビードールがスイートピーを救うため自らを犠牲にします。
キリスト教の教義においては、救世主イエス・キリストが人類をその罪(ユダヤ教を批判したこと)から救うために、身代わりに磔刑になったとされています。そういった思想からか自己犠牲が救済であるとされている映画はたくさんあります。今作でもベイビードールの自己犠牲が彼女にとっても救済になったと言えるでしょう。
自己犠牲によって成される究極の正義をもって世界を救う、ヒーロー映画に多いテーマです。(それが本当に正義かどうかは今は置いておくとして)


もう一つ冒頭の語りで「誰にでも天使がいる」と言いますが、この天使とは神の使者などではなく、これも自己の一つであると考えます。
ベイビードールとスイートピーは別の2人の人間ですが、ある意味では表裏一体の自己の存在です。ベイビードールはスイートピーを立ち向かうようたきつけますが、一方で最後までベイビードールを導いてくれたのはスイートピーの存在です。舞台の精神病院に来た時、ベイビードールがステージ上のスイートピーを相哀れみを含んだ表情で見つめ、それをスイートピーが見つめ返すシーンで彼女たちの運命は一つになったのです。
己のなかの天使としてスイートピーの前に現れたのが表裏一体の存在であるベイビードールなんだと思います。


サウンドトラック

作中では音楽を聞きながらファンタジー世界へ入っていきます。作中はフルで聞けないのでサントラ買って聞いてました。
私がSweet Dreams(Are Made Of This)を知ったきっかけはこのサントラです。
エミリー・ブラウニング歌も上手い。
Where Is My MindとAsleepがこの作品らしくて良いです。そしてもちろんLove Is The Drug。エンドロールでメインキャストがステージでパフォーマンスするシーンは最後まで楽しませてくれるなぁと思います。
映画観ずに音楽だけ聴いてもらうだけでも良いくらいです。笑

 

原題のSucker Punchとは何に対する「不意打ち」だったのか

彼女たちは着々と計画を進めていたし、それを阻止したい人物も計画には気づいていたので作中の人物に対してではないと思います。ベイビードールが全てを理解して、自分を犠牲にしてスイートピーを救うシーンは今まで物語を進んできた主人公がそこで交代して、最初は不意打ちを食らったような気持ちになったし、2人は一つの存在であると気付かされる部分なので私は観客に対する不意打ちを指すと考えてます。

 

余談

この作品を観て個人的にはAviciiのWake Me  Upが想起されます。言わずもがな良い曲です。
原題のSucker Punchで検索するとある海外のゲーム制作会社がヒットするのですが
Ghost of Tsushimaを最近遊んだ時妙に繋がりを感じて勝手にテンション上がってました。対馬の蒙古襲来が時代背景のとても良いゲームです。こちらもぜひ。

作中いろんな格言やらが出てきて説教くさい気がするかもしれませんが、めちゃくちゃ噛み砕いて分かりやすくしてくれてると思ってご覧ください。たまにはド直球の映画もいいものです。